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　　　　レジオネラ菌の生態と感染

在郷軍人病の感染が成立するのは、自然界に存在するレジオネラ菌がそのまま
問題を起こすわけではなく、「レジオネラ菌の増殖」を経て「レジオネラ菌が患
者によって吸入」されて感染が起こるものです。レジオネラ菌は藻類やアメー
バと共生して増殖するので、レジオネラ菌が混入しても、レジオネラ菌の増殖要
素である藻類やアメーバーによるスライム等の発生が制御されていれば、結果的
にレジオネラ菌汚染への予防と対策になります。

　　レジオネラ屬菌の電子顕微鏡写真
　　（東京都立衛生研究所ホームページより）

ここでは、レジオネラ菌についての基本的知識について説明いたします。

《レジオネラ菌の生態》
レジオネラ菌は、好気性グラム陰性桿菌でコイル状あるいはラセン状の極鞭毛
を有す。土壌細菌の一つであるレジオネラ菌は自然界に広く分布し、クーリング
タワーや河川・湖・プールなどを汚染していることが知られている。レジオネラ
菌は、発育至適温度３５〜３６℃，至適ｐＨ ６.９ではあるが、Ｌ−システイン
および微量の鉄を必要とする。環境水中のレジオネラ菌は、藍藻や緑藻などの藻
類やアメーバなどと共生関係にある。藻類が光合成によって産出した有機炭素化
合物をレジオネラ菌が利用し、その際レジオネラ菌は藻類に二酸化炭素を供給し
ているものと考えられる。

《レジオネラ菌の感染経路》
レジオネラ菌の感染経路は、まだ具体的に解明されてはいないが、今までの発
生例から見ると次のようになる。
・人から人への感染はない^*『日和見感染』である。
・工事などで空気中に飛び散り、ビルの空調冷却塔の冷却水に入って繁殖する。
この汚染された冷却水が、空調装置を経て室内の空気中に浮遊し感染源となる。　
・飲料水・貯水タンク・加湿器・水族館・プール・温泉など、藻類やアメーバの
　生息場所がレジオネラ菌の感染源と見なすことができる。

　　^* 『日和見感染』について
　健康な人には固有の病原性を持たない菌（例えば人に常在している微生物）などが、
　ガン・代謝障害・慢性消耗性の疾患のある人・ヘビースモーカー・アルコール中毒
　者・高齢者に感染症を引き起こすことがある。
　このように、元来は病原性の低い微生物でも、抵抗力の弱った人に対しては強い病
　原性を発揮する場合がある。これを日和見感染という。

《レジオネラ菌の感染症状》
「在郷軍人病」は、学名を「レジオネラ　ニューモフィラ」といい、アメリカの
在郷軍人大会で集団発生したことから名付けられた。原因不明の急性肺炎に似た
在郷軍人病は、主に夏季にアメリカでの集団発生が多く報告されている。　
在郷軍人病は、通常２〜１０日の潜伏期間のあと、全身倦怠感・筋肉痛・頭痛を
初期症状とし、悪寒を伴って４０℃前後の高熱を発し、一日以内に乾咳・呼吸困難
といった急性肺炎症状、腹痛・下痢等の胃腸炎症状、精神錯乱などの症状が認められる。
この菌は細胞内で増殖するため、治療法としては、脂溶性で細胞内に入る抗
生物質の「エリスロマイシン」や「リファンピシン」等を投与することにより治
療効果を得ることができる。

　-・-・-参考文献-・-・-
　　冷却塔と「在郷軍人病」について（昭和６１年８月）：日本冷却塔工業会
　　環境科学辞典：東京化学同人（荒木峻、沼田眞、和田攻　編）
　　在郷軍人病に関する資料：日東化工株式会社
　　　以上

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